お勉強メモ

経済学・計量経済学・統計学などのお勉強メモです。

経済学メモ:経済学でよく使う数式②

・本稿の内容
ある変数X(例えば消費者物価指数などを想定してください)のt期における変化率g_{t}



g_{t}=\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}}

と書くことができます。このg_{t}は以下のようにX_{t}X_{t-1}の自然対数差分で近似することができます。



g_{t}=\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}} \approx \log X_{t}-\log X_{t-1}

上式のように書ける理由と、実際の時系列データを使用して\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}}\log X_{t}-\log X_{t-1}がほぼ同じ値になることを確認します。

・本文

Ⅰ:近似式の導出

f(x)=log (1+x)とする。
f(x)を1回微分すると



f^{'}(x)=\dfrac{1}{1+x}=\dfrac{(-1)^{1-1}(1-1)!}{(1+x)^{1}}

である。
f(x)を2回微分すると



f^{(2)}(x)=\dfrac{-1}{(1+x)^{2}}=\dfrac{(-1)^{2-1}(2-1)!}{(1+x)^{2}}

である。

f(x)を3回微分すると



f^{(3)}(x)=\dfrac{2}{(1+x)^{3}}=\dfrac{(-1)^{3-1}(3-1)!}{(1+x)^{3}}
である。

f(x)を4回微分すると



f^{(4)}(x)=\dfrac{-6}{(1+x)^{4}}=\dfrac{(-1)^{4-1}(4-1)!}{(1+x)^{4}}
である。

f(x)をn回微分すると



f^{(n)}(x)=\dfrac{(-1)^{n-1}(n-1)!}{(1+x)^{n}}・・・①
である。

log (1+x)x=0テイラー展開(マクローリン展開)する。①式より、n次の係数は



\dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}=\dfrac{\dfrac{(-1)^{n-1}(n-1)!}{(1+0)^{n}}}{n!}=\dfrac{(-1)^{n-1}}{n}

であるから、



log (1+x)=x-\dfrac{1}{2}x^{2}+\dfrac{1}{3}x^{3}-\dfrac{1}{4}x^{4}+\cdots ・・・②

となる。よって、②式より、log (1+x)の1次近似は



log (1+x)\approx x

となる。xg_{t}=\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}}を代入すると



\begin{eqnarray}
g_{t}\approx log (1+g_{t})&=&log (1+\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}})\\
&=&log (\dfrac{X_{t}}{X_{t-1}})\\
&=& \log X_{t}-\log X_{t-1}
\end{eqnarray}

となる。

Ⅱ:実際のデータで確認

消費者物価指数(総合)の年次データ(2000年~2021年)を用いて、\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}}\log X_{t}-\log X_{t-1}を比較していく。消費者物価指数のデータはここから取得した。

取得したデータをExcelを用いて以下の画像のように整理する。

\dfrac{X_{t}-X_{t-1}}{X_{t-1}}で求めた値を「通常」列、\log X_{t}-\log X_{t-1}で求めた値を「対数差」列に記載している。(どちらも100をかけている。)計算された値を見ると、両者でほとんど差がないことが確認できる。

・参考文献
石井俊全(2014)『1冊でマスター 大学の微分積分』技術評論社